Vol.03 鈴木其一『立雛図』
二月があっという間に終わりもう三月、もうすぐ桃の節句ですね。
今回は鈴木其一の『立雛図』を観賞しようと思います。
私たちが現在「雛人形」と聞いて想像するのは赤い段に座った美しいお雛様達ですが、江戸時代までは「立雛」というこちらの作品の様な形が主流だったようです。
また地域にもよりますが、現在関東で一般的になっている向かって左が男雛、向かって右側が女雛という並べ方も、明治以降に西洋のルールを取り入れたからと言われています。
男雛と女雛の着ている着物を見てみると、二人お揃いの柄を着ていますね。
着物の青い部分は「亀甲文様」。正六角形は亀の甲羅を模しています。亀は長生きする動物ということから、
この文様は古くから長寿吉兆のシンボルです。更に「亀甲繋ぎ」といって同じ柄が続いているのは「繁栄」を願った文様です。
また、着物の赤地の部分には松と藤が描かれています。特に男雛の中心には松が大きく描かれ、女雛は藤が多く描かれています。
日本では古くから松を男性に、藤を女性にたとえ、これらを近くに植える習慣があったり、昔の和歌でも藤と松が一緒に詠まれることが多いのです。
着物の柄を見てみると、このお雛様には、それを飾るご両親の子供たちへの長寿と繁栄への願いが込められている事がわかります。
言葉ではなく、モチーフや柄で気持ちや願いを表現する事ができるのが着物の魅力の一つですね。
【筆者のご紹介】 マドモアゼル・ユリア
DJ兼シンガーとして10代から活動を始め、着物のスタイリング、モデル、コラム執筆やアワードの審査員など幅広く活躍中。多くの有名ブランドのグローバルキャンペーンにアイコンとして起用されている。2020年に京都芸術大学を卒業。イギリスのヴィクトリア・アルバート美術館で開催された着物の展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンヴィジュアルのスタイリングを担当。
https://yulia.tokyo/