本展は終了いたしました。
展示内容
日本人は古来自然世界の中に神秘性を見いだし、時には自然への畏怖までを表現する独特な感覚があります。本企画はその日本人独自の自然観・思想を背景に、新たな表現を試みる写真家 六田知弘氏の連続企画となっております。
全体のテーマは「宇宙を構成する五大原素 - 地水火風空」。それは那智の滝、岩山、石、吉野の自然(空、霞、霧、雲など)を日本人の自然観、自然信仰を背景に撮影した作品を展示する連続企画です。
本企画初回は「水」をコンセプトとし、その神秘性とエネルギーに満ちあふれた世界を約40点展示し、同時に販売まで行います。
本企画展では眼に見えているもののみではなく、かつ形になっているものを表しているのではないという体感的な写真、そのもう一歩奥でのみとらえることのできる感覚をご体感していただければと思います。
対象と六田氏自身の波動の交感がベースになっている何か。例えばそれは実は水をとらえているようで、そうではないかもしれないということ。
水という形を得たものだけれども、捉えているのはその奥にあるものは何かなど、観覧される方の感覚を触発する作品を揃えております。
本展示会を通じ、自然と対峙し続けている写真家・六田知弘氏の表現における新境地を是非ご堪能いただければと考えております。
山下祐二氏寄稿文
六田知弘さんの「水ノ貌」と題する今回の個展の構想を聞いて、私はすぐに、盲目の箏曲家・宮城道雄(一八九四~一九五六)の処女作である「水の変態」という曲のことを思い浮かべたのだった。(中略)
今回の六田知弘さんの個展で発表される作品は、まるで宮城道雄の脳内ヴィジョンを具現化したようではないか!私が勝手にそう思っているだけかもしれないが、盲目の少年がかつて見た記憶と音によって紡いだヴィジョンと、六田さんがカメラというある意味「ブラックボックス」である機械を通じて紡いだヴィジョンとが、私の脳内で不思議にシンクロするのが、なんとも嬉しい。
六田知弘さんとはじめて会ったのは、もう十五年ほども前のことだ。当時、創刊されたばかりの『和樂』という雑誌で連載をはじめたころだった。(中略)
そして、その後の彼の仕事も、ずっと密やかに見てきたつもりだが、どうやら彼は、この個展あたりから、壮大な総決算に向かっているようだ。(山下裕二氏寄稿文より抜粋)
作家プロフィール
写真家 六田智弘(むだ ともひろ)
ヒマラヤの村に暮らして撮影した「ひかりの素足―シェルパ」以来「自然や宇宙との根源的なつながり」を遠くに探りながら、モノ、風景、人物など様々な事象を対象に撮影し、写真展や出版を通じて発表。仏像などの日本美術のほかヨーロッパ中世美術、雲岡石窟等の仏教遺跡など、文化財、古美術品の撮影も多く手がける。
- 1956年 奈良県に生まれる。
- 1980年 早稲田大学教育学部卒業。
- 1982年よりネパールヒマラヤ山中のシェルパの村に暮らして撮影。
- 1988年 最初の個展「ひかりの素足―シェルパ」( 新宿ニコンサロン)を開催。
[ 主な写真展 ] | |
2007年 | 「祈りの中世 ロマネスク美術写真展」(国立西洋美術館/東京) |
2008年 | 「祈りの道 サンティアゴ巡礼の道と熊野古道」 ルイス・オカニャとの二人展 (和歌山県田辺、パリ、サンティアゴ、東京を巡回) |
2009年 | 「シトーの光」(繭山龍泉堂/東京) |
2009年 | 「Clair Obscur」(Galerie Frederic Moisan / パリ) |
2010年 | 「壁の記憶」(丸の内ギャラリー/東京) |
2011年 | 「雲岡 仏宇宙」(繭山龍泉堂/東京) |
2012年 | 「OKUGAKE」(金峯山寺本地堂/奈良県吉野山) |
2013年 | 「LES MURS DU TEMPS」(Galerie Yoshii/ パリ) |
2013年/2014年「3.11 時のイコン 東日本大震災の記憶」(相田みつを美術館/渋谷区立松濤美術館) | |
2014年 | 「蓮―清らかな東アジアのやきもの×写真家・六田知弘の眼」 (大阪市立東洋陶磁美術館/大阪) |
2009年より写真展「サンティアゴ巡礼の道 六田知弘 東洋のまなざし」がヨーロッパ各地を巡回中 |
主な写真集
開催概要
写真家 六田知弘展「水ノ貌 MIZU NO BO」
偶然と必然の間に・地/水/火/風/空
- 会期
2014/9/9(tue)-9/30(tue)
10:00〜18:00- 会場
加島美術
観覧無料- 展示点数
約45点